






東海林広太〈パンザマスト〉
本冊子は、2022年9月、Printed Unionでの「東海林広太〈パンザマスト〉」の開催に合わせて出版されました。
2019年3月31日から12月30日にかけて、日記として記された東海林広太のTwitter文章を抜粋し、写真と言葉を一冊に合わせて綴じています。
―
出版日: 2022年9月22日
出版: Printed Union
デザイン: 原田光丞
製本: 中綴じ
写真ページ84P
文章ページ40P
サイズ: 144mm x 220mm
エディション: 300
―
どこをいくら探してももう見つからないことがある。
それは人だったり場所だったり記憶の中の景色だったりする。
写真を撮るようになってからなんとなく、地元を撮るようになった。きっかけはいくつかあったけどなんとなくが今も続いている。
今でもふと、もう存在しない場所やもう会えない人を探してしまうことがある。記憶の中のイメージはどんどん曖昧になっていく。
撮れる時になるべく全部写そうと思っていたけど写真を見返すと案外撮っていなかった。
窓際の回転椅子、枯れかけの鉢植え、くまの刺繍の帽子、母が育った部屋の壁紙、オレンジのランプシェード、くるみボタンのカーディガン、ポケットに残ってたチョコレート、日でやけたカーテン、部屋を繋ぐバルコニー、壊れた時計、アラミスの香水、ショートホープ2箱、淡い水色のタオルケット、話し声、沈黙した時のTVの音(再放送の時代劇)、笑い方、お茶を注ぐ音、5時のパンザマスト、刺繍の花束、渇いた骨。
実家の前の道は緩やかなカーブで見通しが悪かった。
俺は向こう側がよく見えないその道が好きだった。カーブの先、曲がりきった次の瞬間に全く別の場所に行けるかもしれないと、いつも思っていた。
あの家はもう無いし、買いに行かされた煙草の銘柄と握りしめた小銭の感触しか覚えていない。
撮って残したことより撮っていないことは山ほどある。そういうふうにこれからも続いていく。
東海林広太
―
東海林広太(しょうじ・こうた)
1983年 東京生まれ。2007年よりスタイリストとして活動した後、2014年から写真家のキャリアをスタート。現在、東京を拠点に活動をしている。2017年に初となる個展「Beautiful」を開催、同年「つぎのblue」、2019年「go see」、「過去に写した時間 誰も知らなかった写真について」、「青い光」、「happen」、2021年「everything matters」、「あの窓とこの窓は繋がっている」を開催。
Web: https://ko-ta-shouji.com/
Instagram: @ko_ta_s
―